読んでおきたい3.11東日本大震災以降に出版された絵本

絵本といっても童話、児童書等、時代により言い方は変わりますが、メッセージ性は考えさせられるものも多くあります。同じ話でも、時代によって解釈をちょっとかえたのだろうとも想像できます。たとえば、桃太郎。鬼とはどういう意味か?敵や災いや困難なことの象徴として置き換えられますね。今回は3.11以降に書かれた絵本を紹介します。2011年 ( 平成 23年) 3月11日 14時46分を自分自身身に刻むように。

目次

長谷川集平 およぐひと 

東日本大震災は、終わっていない。3.11、失ったものの大きさに慄然とする。報道をはじめ私たち大人は、何をしただろう。何ができたのだろう。自宅に戻りたい人、遠くに行かざるをえない人。私たちは何を求めているのか、心の奥深くに鋭く問いかける長谷川集平の絵本世界。

Amazon およぐひとより

解放出版社 長谷川集平(著)

東日本大震災をテーマにした絵本。主人公の男性は、取材に行った長谷川集平さんの姿を彷彿させます。家や車が川に流される中、スーツ姿の男性が家の方向へ泳ぎ、赤ちゃんを抱いて逃げる母親の姿も描かれる。無数の名もなき人々の死に直面し、娘からの問いに答えられない主人公。胸が詰まるほどの感動が伝わってくる。

荒井良二 きょうはそらにまるいつき

偕成社 荒井良二(著・絵)

夕暮れの公園で、乳母車の中から赤ちゃんが空を見ています。東の空から、まんまるい月がのぼってきました。バレエの練習から帰る女の子や、新しい運動靴を買った男の子、仕事が終わった洋裁店の親子や、ギターの練習をしている人、夕食のかたづけをするおじいさんとおばあさん。町に暮らす人たちも、ふと見あげた空にまるい月をみつけます。公園にあつまった猫たち、山にいる熊の親子、海でジャンプするクジラの上にも、まるい月が輝いています。それぞれの人が暮らす、それぞれの場所に、やさしい光がふりそそぐ夜。町の公園では、にぎやかなお祭りがはじまりました。

Amazon きょうはそらにまるいつきより

「きょうはそらに まるいつき」の繰り返しはなんともいえず心地がよい。バレエのレッスン帰りの女の子、店じまいをする店員さん、お母さんに抱かれた赤ちゃん、海ではねるクジラ、ギターの練習をする男の子、お祭りの広場。世界中の誰もが見る「お月さま」。そして、ご褒美のような満月。文字が少なくシンプル、そして色彩が美しいので小さな子どもがいれば、満月の夜、読み聞かせにどうでしょうか。「あさになったので まどをあけますよ」とセットで読みたい絵本です。

森絵都 希望の牧場

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岩崎書店 森 絵都 (著), 吉田 尚令 (絵)

この絵本は、福島原発の警戒区域内に取り残された「希望の牧場・ふくしま」のことをもとにつくられた絵本です。「希望の牧場・ふくしま」では、餌不足の問題が深刻化していくなか、今も牛たちを生かすための取り組みが続いています。東日本大震災のあと発生した原発事故によって「立ち入り禁止区域」になった牧場にとどまり、そこに取り残された牛たちを、何が何でも守りつづけようと決めた、牛飼いのすがたを描きます。売れない牛を生かしつづける。意味がないかな。バカみたいかな。いっぱい考えたよ。
「オレ、牛飼いだからさ」

Amazon 希望の牧場より


福島原発事故は続いている。目に見えない放射能のため、みんなの故郷が消えた。人は逃げたが動物たちは取り残された。牛の世話をするため、牧場に残った牛飼い。放射能のため出荷できない牛330頭にエサをやる毎日。牧場は20キロ圏にある。殺処分を拒否し自分たちに意味はあるのかと自問自答。牧場に協力する人も現れてくる。希望が見える話。希望の牧場と称されていますが、弱った牛が死ぬたびに、いたたまれない気持ちになります。牛飼いとして、彼の苦悩は深いものです。そこには動物たちが暮らし、やむをえず殺処分される牛たちもたくさんいます。原発再稼働をや処理水の問題等もあり、福島原発事故は終わっていないことに気が付かせられます。深い感慨を覚える絵本です。

指田和 はしれ、上へ!

「自分の命は、自分で守る! 」2011年3月11日。
東日本大震災のあの日襲ってきた大津波をみんなでいきのびた、釜石の、小・中学生のドキュメント。

Amazon はしれ、上へ!より

ポプラ社 指田 和 (著), 伊藤 秀男 (絵)

読んでいて涙が止まりませんでした。「釜石の奇跡」と呼ばれた鵜住居小学校と釜石東中学校の生徒たちが津波から避難した様子が描かれています。聞いたことがある方も多い話だと思います。「つなみてんでんこ」とは、「津波がきたら、それぞれが逃げて、自分で自分の命を守る」という教訓です。過去の津波被害の経験から、私たちは教訓を生かす必要があると強く感じさせられます。だれもが自分のこと、家族のことを思ったに違いない。あの日、子どもも大人も感じたであろう恐怖や不安胸に迫る子どもの視点で書かれた絵本です。

国立国際こども図書館で3.11以降の絵本の書棚が目に留まりました。手に取り、立ち読みし、涙し、希望を抱き、気持ちが上下左右に揺さぶられました。国立国際こども図書館は子供向けの絵本の歴史や日本の作家の変遷がよくわかります。親子で上野公園を散歩、そして読書タイムなどいかがでしょうか→詳しくはコチラ

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中学受験国語の1:1オンライン指導、ブログを運営しています。

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