前回は「猫の建築家」、主題は「美」についてのお話でした。問題と解答がすぐ言葉にできればすごいと思いますが、なかなか難しかったと思います。台湾、台北在住の絵本作家ジミーの作品。作者自身が闘病生活を経験し、病院のドクターや看護師に捧げられた作品です。主題は「出会いと別れ」としました。本当に大切な事は、何なのか?闘病生活から生還した作者のメッセージが込められた作品です。
ジミー (作・絵) 有澤 晶子 (翻訳) 早川書房
あらすじ
物語は、ひとりぼっちの主人公がある日、一匹の魚と出会うことから始まります。その魚は、主人公にとって家族や友達、そして恋人のような特別な存在です。主人公は、その魚との出会いで心が満たされ、幸せを感じます。しかし、やがてその幸せを独り占めしていることに気づきます。主人公は勇気を出して魚を自由にする決断をします。そして、その過程が素晴らしいものとなります。
この物語は、人間の孤独と運命を幻想的で美しい絵とユーモラスな語りで描かれています。作者のジミーは、自身の孤独や運命と真正面から向き合った作家であり、この物語は彼の心の奥から生まれたものでしょう。もうちょっと孤独・運命・幻想的・ユーモラスについて詳しく書くと、物語の中で、主人公は魚との出会いを通じて、人々の心に寄り添う存在を見つけます。魚はほほえみかけ、心を満たしてくれるが、その幸せを独り占めすることに疑問を感じます。主人公は、魚を広い世界へと解き放つ決断をします。その理由は、魚を束縛せず、自由に生きさせることで、魚自身も幸せになると信じたからです。この幻想的な物語は、読者に深い感情と共感を呼び起こすことでしょう。ユーモラスについてはもうちょっと説明が必要ですね。
ユーモラスな部分について
この物語のユーモラスな部分は、魚と主人公のやり取りに見られます。魚は普通の魚ではなく、微笑みかけてくれる存在であり、主人公に対して愛情を示します。その微笑みが、読者にとっては不思議でユニークな要素となります。また、魚と主人公のコミカルな対話や、魚がどんな風に微笑んでいるのかを想像することも楽しいポイントです。さらに、物語の絵の中には、魚が微笑んでいる様子が描かれています。この絵が、読者に微笑みを誘うことでも、ユーモラスな雰囲気を醸し出しています。
この絵本は、深い感情と癒しを求める読者にとって、心温まる一冊となることでしょう。
はっとぼくはきづいた
ぼくも大きな水槽に囚われた、ちっぽけな魚だったんだ。
ほほえむ魚 幾来作品 早川書房
個人的に気に入った部分です。「水槽」、「囚われるを」堅苦しい漢字を用い、「ちっぽけな」がやわらかいひらがなであることから、いとおしい存在が、牢屋や水槽等に閉じ込められているんだという気持ちが伝わってきます。題名の「ほほえむ魚」の「ほほえむ」もひらがなで柔らかいイメージがします。挿絵も青が基調で文字を引き立たせます。心の中では、「ぼく」に対して微笑みかけてくれる一匹の魚から幸せを噛みしめていたとき、独り占めしないで、解き放つことに気が付いたわけです。なぜなら、独り占めしている「ぼく」は、その魚と同じ囚われの身だから。相手を思い、解き放つ勇気、「ぼく」の心はどう変わっていくのか。最後のページまでゆっくりと向かいました。
中学入試の視点
問題:主人公はなぜ魚を広い世界へと解き放つ決断をしたのでしょうか?その理由を主人公と魚の関係を明確にしながら説明しなさい。
解答例)主人公は孤独を感じていたが、ある日一匹の魚と出会います。この魚は彼に微笑みかけ、心を満たしてくれる存在でした。しかし、主人公はその幸せを独り占めしていることに気づき、魚を広い世界へと解き放つ決断をします。なぜなら、主人公は魚を束縛せず、自由に生きさせることで、魚自身も幸せになると信じたからです。
解説:この問題では、「ほほえむ魚」の物語の要点を把握し、主人公の心情や行動について考えることが求められます。解答では、主人公と魚の関係、魚を解き放つ理由に焦点を当てて詳しく説明することが重要です。また、物語の中での主人公の心の変化や思いを読み取り、適切に表現することが求められます。
物語の要点を把握し、論理的に説明する力を身につけるための問題として作成しました。物語の内容を正確に理解し、適切な言葉で表現できるとうれしいです。
出会いと別れ、束縛と解放。 誰かのためのことは、自分のためのことにもなる。
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