前回は社飼い主の犬との愛情をテーマにした「デューク」についての絵本を紹介しました。中学受験において、物語・小説は得意・不得意が激しいジャンルです。問題作成者の出題意図が読み取りにくいことと、文字制限の関係上、情景描写や人物像がつかみにくいためです。今回紹介する絵本は『STAR EGG 星の玉子さま』哲学や社会問題に触れており、問いかけについて読みながら考察できます。最後に作者からの解説は必読です。
あらすじ
文、画ともに森博嗣(もりひろし)作の絵本。初めて自分で絵を描いた、自分の絵を使った作品です。これが見かけ上の最も大きな特徴だと作家本人ものべています。
本は、過去に数冊作りましたけれど、すべて他の方に絵を描いていただきました。ですから、『STAR EGG 星の玉子さま』は、初めて自分で絵を描いた、自分の絵を使った最初の作品です。これが見かけ上の最も大きな特徴だと思います。
印税を受け取らない理由 『STAR EGG 星の玉子さま』発刊にあたって 2004/10/8 森博嗣
しかし、本当の特異点は別にあります。この本は、「できるだけ多くの人に読んでもらいたい」と僕が考えた初めての作品なのです。そんなこと、当たり前ではないのか。作家たるもの、書いた作品を、上梓した本を、できるだけ多くの読者の手に取ってもらいたいと願うのは、ごく普通の感情だろう、と思われるかもしれません。しかし、正直にいいますが、僕は今回が初めてなのです。
小さな星に住む玉子さんが愛犬ジュペリとともにおじいさんが作ったロケットに乗って近くの星を旅するお話。(サン=テグチュベリの「星の王子様」を連想してしまいます。)旅先は穴の空いた星や木こりの星などいろいろな星が登場し、玉子さんがそれぞれの星の説明と感想、疑問などをつぶやいていく。前半は主に物理化学的な問題。子どもの「なぜなぜ質問」としてなかなか難しい謎かけが読者に考えさせる時間を与える。多分うまく説明はできずに読み飛ばしていくことを想定していますね。後半では、最近の環境問題や社会問題も登場する。哲学(なぜなんだろう)から、社会問題までいろいろなことが地球では起こっているな。解説は全ページに対してコメントが付いてるのだ。オススメの読み直し上下左右の4方向から絵を見直してみると、本当に違った景色が見える。物事も角度をかえて見る必要があるなと思います。この解説を読みながらもう一度最初から読み直してしまう。絵は可愛いが内容はかなり深い。森博嗣氏がみんなに読んでほしいと本当に願った作品なのだろうと感じる。
個人的に感じたものがあるのはコチラ↓
「孤独とは何でしょうか。寂しいとは何でしょうか。人が誰もいないことでしょうか。でも、誰もいなければ、寂しいと感じる人もいないはずです。誰かがいるから、寂しいと感じることができるのです。孤独も、誰かがいて、はじめて孤独になるみたいでした。」
『STAR EGG 星の玉子さま』 森博嗣
森博嗣氏はミステリー作家として有名ですが、大学の工学博士、自宅の庭に鉄道をつくっているなどでも知られています。ミステリーツアーはしませんが、特に面白かった作品として「―森助教授VS理系大学生 臨機応答・変問自在」はとても面白かったです。教授の返答が的確過ぎてユーモアも感じます。玉子さんが学生の中にいるような気もしてきます。
中学入試では
この絵本から入試問題をつくるとなると、相当力量のある先生だと思います。国語の読解や意見、心情問題だけでなく、理科の物理分野でも考え方を求めるような出題が想定されます。また、解説と組み合わせて資料を読み解く問題、想像力を試す問題等文作力を見る問題としても公立中高一貫の適性検査型入試でも作成できます。さらに、詩として単体で出題するという挑戦もできます。(この場合は某国立大学附属中学校でしょう。)
「星の王子さま」?パロディー?いや、「星の玉子さま」です!(笑)。じっくり、ゆっくり挿絵を見て、考えながら読んむと、最後に解説がありいろいろ気づきがありました。イラストも作者本人。玉子さんと一緒に星の旅をするジュペリは可愛いですね。物理や哲学の問答は親子で楽しめる絵本だと思います。
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