前回は「捨て犬」についての絵本を紹介しました。中学受験において、物語・小説は得意・不得意が激しいジャンルです。問題作成者の出題意図が読み取りにくいことと、文字制限の関係上、情景描写や人物像がつかみにく場合が見うけられます。今回紹介する絵本は戦争と平和についての一冊。
ノボッチと木 伊集院静(文) 米田民穂(絵)
あらすじやテーマ
男と旅人、子犬と木、娘さんと男の出会い。ここまではしっかりと読んでほしい。読んでいるとちょっと切なくなったり、心が温かくなったりしますが、子どもがちょっと切なく感じることがない場合は世代や立場によって受け止め方がかわることもあるかもしれません。もし、読み飛ばしていたらゆっくり読むように促してください。それぞれの登場人物の展開と「木」とが関わってきます。
絵本の挿絵はシンプルでかつ美しく、読者にその場を想像させ、引き込む力がああると思います。色彩や描写によって、登場人物の雰囲気や親密な関係が表現されています。ノボッチの由来、エンディングまで心温まる絆にじわっと感動するのではないかと思います。
個人的に「戦争と平和 」について考えさせられました作品です。以下に親子で考えてみる質問を3つ挙げます。
- 「戦争とは何だと思う?なぜ戦争が起こるのか考えてみよう」
- この質問は子どもに戦争の概念を理解させ、その背景や原因について考えさせることができます。子どもが戦争をどのように捉えているか、またなぜ戦争が起こるのかについて彼らの考えを聞くことが重要です。
- 「平和とは何だと思う?どのようにして平和を保つことができると思う?」
- この質問は子どもにとって平和の意味や価値を考えさせ、平和を維持するための方法について考えさせます。平和を守るためには何が必要か、どのような行動が重要かについて子どもの意見を尊重し、議論することが大切です。
- 「戦争や平和に関する話を聞いたとき、どんな気持ちになるかな?その気持ちをどうやって表現することができるか考えてみよう」
- この質問は子どもたちが戦争や平和に関する感情を認識し、それを表現する方法を見つけることを助けます。感情を表現することは健全なコミュニケーションとして重要であり、子どもが自分の感情を理解し、共有することができるようにサポートすることが大切です。(中学入試において「戦争・平和」は主題として出題されることがありますが、子どもが問題作成者とマッチした答えを書けるかどうかは国語の難易度が高い学校ほど、解答時間を奪われることがままあります。)
私の好きな表現です。
男は毎夜、庭の木に感謝の祈りを捧げました。木は何も返答しませんでしたが、見事な枝は父親の手のようだし、そよ風に立てる葉音は母親の声のようでした。
アシェット夫人画報社 「ノボッチと木」より
枝を父親、そよ風を母親としてたとえを用いていますが、「このたとえはどんなことを言いたいのか」を子どもが自分のことばで説明できるようになればすばらしいです。親子で意見を出し合ってみてもいいですね。中学入試で「自分のことばで説明しなさい、もしくは説明しなさい」と問われたら、「この問題自分なりにきちんと書けた」と子どもが自信をもっていえればすばらしいです。
繰り返し述べますが、「親子の10分(これは私の個人的な造語ですが)」、10分を生きてきた時間で比較しましょう。人生の中での10分の占有時間は40歳であれば1/210万、6歳であれば1/31.5万、12歳であれば1/63万となります。子どもが成長するにつれて、言語、感情等の経験を積み受け止め方や表現の仕方が変わってきます。絵本1冊10分だとしても貴重な経験。筆者が伝えたいことは小説や物語と同じです。
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