本文の「つながり」が追えない子への対処法

本文の「つながり」が追えない子への対処法の話

接続語と指示語で時間不足が劇的に改善する話「文章は読んでいるのに、内容が頭に残らない」「段落のつながりがわからず、読解問題でズレた答えになる」こうした悩みを抱える子どもは少なくありません。実はこのタイプの読みづらさは、語彙力でも集中力でもなく、本文のつながり(論理の流れ)をつかむ力 が未発達なことで起こります。接続語・指示語・段落の役割。この3つが整理されるだけで、読解は驚くほど安定します。家庭でできる改善も、実はとてもシンプルです。しかし、地道に進めないと身につきません。
How to deal with children who can’t follow the ‘connections’ in the text.

目次

なぜ「つながり」が重要なのか

国語は「流れをたどる科目」です。どんな文章も、主張 → 理由 → 具体例 → まとめという順序でたいていは構成されています。

ここが見えないと
・どこが大事なのか
・なぜこの行動をしたのか
・どの情報が答えにつながるのか

がつかめません。

特に時間不足の子は、この“流れの把握”に時間を使えないまま、問題文に突入してしまうためズレが起こります。

家庭でできる3つの改善ステップ

① 指示語を必ずその場で回収する

「これ/それ/あれ/そのこと」これらを曖昧にすると、一気に理解が崩れます。

例:「そのため」→何のためなのか?
必ず直前を確認するクセをつけることで、論理がつながります。

② 接続語だけを先に読む練習をする

接続語は文章の信号です。ここが分かれば、文章の構造が一気に見えます。

・しかし=逆
・だから=理由→結果
・つまり=まとめ
・たとえば=具体例

接続語の意味が瞬時にわかるだけで、本文の読み直しが激減し、時間に余裕が生まれます。接続語の7種類は暗記しましょう。順接・逆接・並列・添加・選択・説明・転換です。呪文のように自分なりに代表的な接続語とセットで覚えることです。

③ 段落ごとに一言で役を決める

段落の役割はたった4つです。
・主張
・理由
・具体例
・まとめ

これを1行でまとめるだけで、長い文章でも「どこを答えに使うか」がすぐ見えてきます。本文の「つながり(文脈・論理・指示語など)」が追えない子に対して、具体的な指導や対策を行った際のBefore/Afterの事例を4つのパターンで紹介します。

事例1:指示語(こそあど言葉)が何を指すか分からない

課題
「それ」「これ」が出てくると、読み飛ばしてしまい、話の対象が何かわからなくなる。

  • Before(対策前)
    • 子どもの様子
      「『それ』って何?」と聞くと、「えっと…前の文全部?」や「わからない」と答える。感覚で読んでいるため、テストで「指示語の内容を抜き出しなさい」という問題が全滅する。
    • 読み方
      「太郎はボールを投げた。それは遠くへ飛んだ。」→「(何かが)遠くへ飛んだんだな」程度の認識。
  • 対策:『指差し・矢印』作戦
    • 指示語が出てきたら必ず四角で囲む
    • その指示語が指す言葉(直前にあることが多い)を探し、物理的に矢印(線)を引かせる
  • After(対策後)
    • 子どもの変化
      「それ」が出てきた瞬間に手が止まり、前の文を探す癖がついた。「『それ』は『ボール』のことだよね」と特定してから読み進めるようになった。
    • 結果
      文と文の接着剤である指示語を意識することで、話の連続性が保てるようになった。

事例2:接続詞(順接・逆接)による展開が予測できない

課題
「しかし」「だから」などの接続詞をただの単語として読み流してしまい、話の展開(プラスかマイナスか)が変わったことに気づかない。

  • Before(対策前)
    • 子どもの様子
      「Aくんは勉強が嫌いだ。しかし、テストでは良い点を取った」という文で、「なんで勉強嫌いなのに良い点なの?」と混乱する。あるいは、「しかし」を無視して「勉強嫌いで良い点を取った」という事実だけをバラバラに覚えている。
  • 対策:『接続詞マーク(信号機)』作戦
    • 逆接(しかし、でも)
       
      ▽(逆三角形)や青色でマーク。「話がひっくり返るぞ!」と注意喚起。
    • 順接(だから、すると)
       
      →(矢印)や赤色でマーク。「そのまま進むぞ!」と意識。
    • 並列(また、そして)
      +(プラス)でマーク。「付け足しだ!」と意識。
  • After(対策後)
    • 子どもの変化
      「しかし」に▽マークをつけた時点で、「あ、次は反対の話が来るな」と予測しながら読めるようになった。
    • 結果
      「勉強は嫌い(マイナス)」だけど「良い点(プラス)」という対比構造が頭に入りやすくなり、論理矛盾を起こさずに読めるようになった。

あくまでもマーキングは設問を理解する、回答するための時間短縮ツールです。マークすることで時間がかかる場合は引き方を工夫する必要があります。引かない方がよい子どもも一定数います。

事例3:一文が長くなると主語と述語の関係を見失う

課題
修飾語(詳しく説明する言葉)が多い長い文になると、「誰が」「どうした」のかが分からなくなる。

  • Before(対策前)
    • 文 「昨日、公園で遊んでいた赤い帽子をかぶった男の子が、転んで泣いている女の子を助けた。」
    • 子どもの様子
      情報量が多すぎて、「男の子が転んだの?」「女の子が帽子をかぶってたの?」と混乱する。最悪の場合、最後の「助けた」という動作主が誰かわからなくなる。
  • 対策:『サンドイッチ(主語・述語)』作戦
     ・「主語」と「述語」だけをくっつけて読む練習をする。(間の修飾語は一旦無視する) 
    ・「男の子が」+「助けた」=「男の子が助けたんだな」と骨組みを理解させる。
  1. After(対策後)
    • 子どもの変化
      長い文を見ても「要するに、誰がどうしたの?」と要点を探すようになった。「赤い帽子」や「公園で」などの飾り言葉に惑わされず、「男の子が助けた」という事実を正確につかめるようになった。
    • 結果
       読み間違い(誤読)が激減
      し、文の意味を取り違えることがなくなった。

事例4:話の「原因と結果」のつながりがつかめない

課題
「なぜですか?」という理由を問う問題で、見当違いな場所を抜き出したり、直前の文をただ書き写したりしてしまう。出来事の因果関係(AだからBになった)が見えていない。

  • Before(対策前)

    • 「雨が激しく降ってきたので、楽しみにしていた遠足は中止になった。太郎はがっかりして肩を落とした。」
    • 問い
      「太郎が肩を落としたのはなぜですか?」
    • 子どもの答え
      「遠足は中止になったから」(惜しいが、根本原因の『雨』が抜けている)や、「楽しみにしていたから」(文脈がつながっていない)。
    • 様子
      「がっかりした」という結果だけを見ていて、そこに至るまでの流れ(雨→中止→がっかり)がつながっていない。
  • 対策:『「から」矢印バック』作戦
    • 結果(〜した)を見つけたら、「なぜ?」と問いかける。
    • その理由となる部分を探し、文末を**「〜から」「〜ので」**に変換して、結果に向かって矢印を引く練習をする。
    • 図式化
      [雨が降った →(だから)→中止になった →(だから)→[がっかりした という簡単なフローチャートを余白に書かせる。
  • After(対策後)
    • 子どもの変化
      気持ちや出来事の変化には、必ず「きっかけ(理由)」があることを意識するようになった。答えを書く前に「〜だから、〜になったんだよね」と口頭で確認する癖がついた。
    • 結果
      「雨が降って遠足が中止になったから」と、根本的な原因を含めた論理的な解答が書けるようになった。

【まとめ】

「理解はできているのに点が伸びない」「本文を読んでも頭に残らない」その原因は能力ではなく、つながりの読み方を習っていないだけ です。接続語・指示語・段落の役割。この3つがそろえば、読解は安定し、時間不足は解消します。

どういうことか、なぜか等シンプルな問題や、条件付きで組み立てやすく(逆に制限する)場合の記述解答は制限時間内に大人がやっても難しいレベルが昨今の中学入試です。

【まとめ】

「理解はできているのに点が伸びない」「本文を読んでも頭に残らない」その原因は能力ではなく、つながりの読み方を習っていないだけ です。接続語・指示語・段落の役割。この3つがそろえば、読解は安定し、時間不足は解消します。

解き直しは演習時間以上にかけないと効果が見えにくいです。積み重ねてもためになっているのか?と思われがちですが、読み違いや設問の意図の汲み取れなさ、書き方の手順、時間配分の再構成などしっかり分析する必要があるかないかで他の教科にも影響します。常に新しい問題を自己採点のみで効果があがる子どもはごく少数です。なぜなら素材文のレベルは大人向けだからです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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