助動詞は中学入試、高校入試問わず、入試頻出ですが、意外に得点がとれない場合は理解と訓練が必要です。
「ない」の識別は有名ですが、ない=ぬだけで否定を置き換えて覚えておくと「ぬ」自体の識別で困る場合があります。塾に通っていれば、何回かは学ぶチャンスがありますが苦労する2パターンとより知識を深める短歌を紹介します。Master the auxiliary verb “nu” and expand your vocabulary with tanka.
助動詞「ぬ」を2種類知っておく
・知ら+ぬ 知ら+ない(打ち消し、否定の助動詞)
・来+ぬ 来+た(過去の助動詞)
この2つが理解できていると、「行かぬ」が「行く」+「ない」(打ち消しの意思)という意味もより理解できます。
■覚えておきたい短歌
秋来(き)ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ 驚かれぬる
藤原敏行(ふじわら の としゆき)
・秋来(き)ぬ=秋がきた という解釈をすることがポイント。完了の意味です。
(現代語訳)は
秋が来たと、目にははっきりとは見えないけれど、爽やかな風の音で(秋の訪れに)はっと気付かされた。
「秋来ぬ」の「ぬ」は、現代では「あきこぬ(秋が来ない)」と読んでしまいますが、ここでは「あききぬ(秋が来た)」となります。助動詞「ぬ」で、完了の意味ですが、文脈から秋が「こぬ…来ない」か「きぬ…来た」と区別できれば最高です。
「さやかに」は形容動詞。視覚的に「はっきりと」という意味ですね。
「見えねども」は、見えないけれどもは「見る+ない」
※打消しの助動詞「ず」の已然形「ね」は中学受験では「ない」に置き換えれられれば十分です。
「風の音にぞ」ふと感じた「風の音こそが」と意味を強めて詠みます。
※強意・強調を表す係助詞「ぞ」は「こそ」等で強めにアクセントをつける言葉として考えられれば十分です。
「おどろかれぬる」は、「驚(おどろ)く」+「ぬ」です。過去を表します。
「驚く」は昔は「はっと気付く」意味になります。「
びっくりした」というのは現代の意味で時代により言葉の意味の変化を感じることができます。古文を学ぶときに役立ちますね。
■ここで再確認!
「おどろかれぬる」は、「驚(おどろ)く」+「ぬ」です。
「ぬ=ない」「ぬ=た」のどちらか?
前者だと「気がつかない」、後者だと「気がついた」となります。
風の音で秋を気が付かないのか気が付いたのかと考えればいいでしょう。
昔の人は、秋がやってくるのは風によって感じられるという一般常識があったようですね。
季節の変わり目でわずかな変化を捉えた、日本人ならではの感性で詠んでいます。
塾や学校で一度は教わる内容ですが、きちんと教わっていなければ、一緒に考えてあげてください。
■古今和歌集
この短歌は平安時代の勅撰和歌集「古今和歌集」に載っています。四季の歌を春夏秋冬の順にあわせて編纂されており、この歌は「秋の部」の巻頭歌に選ばれていることで有名です。(実物や諸本を見る機会が少ないこともあり、意外と教わっていないことが多いです)秋の始まりは平安時代の一般常識であったと推測されます。季節を表す季語の辞書「歳時記(さいじき)」も春夏秋冬のイメージ4冊で販売されているものが現在もあります。
まとめ
知らぬ=知らないで否定の意味を表す。秋来(き)ぬと=秋が来たとと完了の意味を表すことがある。
この2つがわかれば、打消しの意思もよりわかるようになる。
藤原敏行の短歌で、「ぬ」の意味を理解し、古今和歌集と平安時代を結び付ける。
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