中学入試において、制限時間内に文章を読み、問いに適切にこたえるためのスピードをつけるという点で、速読マスターへの一歩を踏み出すための道筋がここにあります。適切な読書環境の整備から、ざっくり読みとまとめ読みのテクニックの使い分け、1か月の具体的な読書プランまで、子どもが効果的に速読力を向上させるための手引きを提供します。※速読だけを追求すると、文章の内容や意味を十分に理解できない可能性があります。
0.「速く読めればいい」というわけではない
速く読むことは重要ですが、その過程で理解力や深い思考力が鍛えられなければなりません。速読だけが全てではありません。速読を追求すると、文章の内容や意味を理解せずに情報を見逃す可能性があり、また、情報の信頼性や正確性を判断する能力が不足する恐れがあります。さらに、文章の背後にある意図や著者の感情を読み取ることも難しくなります。したがって、速読力を向上させるだけでなく、深い理解力や思考力と深く関連しています。受験勉強を通じて、文章を理解し、批判的に考える能力を持つことが、不可欠です。
1.「読書環境の整備」
子どもが速読力を身につけるためには、読書環境の整備が重要です。家には子どもが興味を持つ本や雑誌を用意し、読書スペースを整えましょう。家に本棚に本として収納する、図書館で借りる、デジタル書籍等、状況により興味を引く本に触れる環境が整えば、読書への関心が高まり、速読力の向上につながります。以下にジャンルの例を挙げますが、子どもの興味によって経験値はことなりますので、一度は触れておきたいなと思うジャンルは10歳くらいまでに1冊興味がもてた良書に巡りあっておきたいところです。
- 小説(ミステリー、冒険、ファンタジーなど)
- 科学・自然(宇宙、動物、地球科学など)
- 歴史・社会(日本史、世界史、地理など)
- 文学(詩集、名作小説、エッセイなど)
- 生物・生命科学(生物のしくみ、身近な生物の観察など)
- 数学・算数(パズル、数学の謎解き、算数の問題集など)
- 趣味・創作(絵画、音楽、手芸、料理など)
- 国語・言語(漢字の勉強、語彙の拡充、作文の練習など)
- アート・デザイン(美術の歴史、アーティストの紹介、デザインの基礎など)
- ゲーム・パズル(知的なゲーム、クイズ、パズルブックなど)
※小説と文学を分けていますが、一緒にしても構いません。問題集も例としていますが、本と同じ扱いで構いません。
2.「速読テクニックの練習」
国語のテストを解くうえで、限られた時間に問題作成者の意図に沿った解答を書くという特性から、指導経験上、大きく2通りの読み方があると考えています。ひとつは「ざっくり読み」、もう一つは「まとめ読み」という方法です。ざっくり読みは要点やキーワードを素早く把握する読書法であり、まとめ読みは情報をまとまりごとに読む読書法です。どちらも日常的に練習することで、読書スピードを向上させることができます。適切なテクニックを身につけることで、入試問題などに効果的に対応できるようになります。「速読力」とは書いていますが、論理的に思考することには変わりがありません。暗黙知ではありますが、あえてメリット、デメリットとしてまとめています。
ざっくり読み | まとめ読み | |
メリット | 要点やキーワードを素早く把握できる | 情報をまとまりごとに理解できる |
全体の内容を把握しながら時間節約が可能 | 詳細な理解や論理の把握が可能 | |
問題解決の指針が立てやすい | 詳細な内容やニュアンスを見逃しにくい | |
デメリット | 詳細な内容や論理の把握が難しい | 時間がかかりやすい |
文章の細部やニュアンスを見逃しやすい | 短時間での情報把握が難しい | |
一部の情報が欠落する可能性がある | 長時間悩むことなく必要な情報を見つけやすい |
国語のテストにおいては、「ざっくり読み」と「まとめ読み」を効果的に使い分けることで、時間内で効率的に問題に対応することができます。以下に具体的な使い方を示します。個々の受け止め方に違いがあるので、あくまでも例として参考ください。(書いてあることがすべて正しいわけではありません。どれかの項目がお役にたてればと思います。)
問題の把握(ざっくり読み)
- 最初の数分で全体の問題をざっと目を通す。
- 設問や文章の構造、主要なキーワードを把握し、問題の難易度や範囲を把握する。
- 問題文の指示に従い、重要な情報を見逃さない。
重要な情報の確認(まとめ読み)
- 問題文や文章中の重要な部分を集中して読む。
- 文章のポイントや主要な情報を把握し、解答に必要な部分を見つける。
- 適切な速度で深く理解しながら、重要な部分をメモやマーキングする。
問題の解答(まとめ読みとざっくり読みの組み合わせ)
- 問題に対する正確な解答を見つけるために、まとめ読みで重要な情報を確認し、適切な速度で問題に取り組む。
- 複数の選択肢を比較検討する際には、ざっくり読みを使い、選択肢の要点や違いを把握します。
- 時間内で全ての問題に取り組むために、効果的な時間配分を心がけます。難易度の高い問題に時間を割り当てる場合もありますが、長時間悩むことなく、必要な情報を素早く見つける訓練が必要です。
このように、「ざっくり読み」と「まとめ読み」を使い分けながら、問題の把握から解答までの流れをスムーズに進めることが、国語のテストでの効果的な時間管理のポイントです。言い換えれば、問題文や文章の性質に応じて「ざっくり読み」と「まとめ読み」を効果的に使い分けることが重要です。実際のところは無意識に読み分けているのが実情でしょう。苦も無く文章を読め、問題にこたえられていれば問題はありません。しかし、限られた時間で文章を読み切れない場合、文章全体の構造や要点を把握するためには、「ざっくり読み」を用いて問題のポイントを把握することをお勧めする場合が多いです。一方、文章の詳細な理解や論理の把握が求められる場合には、「まとめ読み」を行い、情報をまとまりごとに理解すると問いに答えやすいです。適切なタイミングで両者を使い分けることで、効率的かつ正確な読解が可能となります。
3.「興味関心に基づく読書プランの作成」
子どもが速読力を向上させるためには、興味関心に基づいた読書プランを立てることが重要です。親子で興味を持てるテーマやジャンルを選び、定期的に関連する本を読むことで、子どもの読書意欲を高めることをお勧めします。子どもが興味を持ちながら読書をすることで、速読力が自然と向上していきます。(ここがなかなか実感しにくく、親としても難しいですね。)お勧め図書などで子どもが興味をもてるように促すことも重要です。良質な文章は縦書き、横書きに限らず、文章を読む習慣は論理的思考力を積み上がります。以下のプランについてはコミットする必要はありませんが、習慣として参考にしてください。
1か月の読書プランの例
- ミステリー小説を読む(読みやすい小説であればジャンル不問)
- 自然科学の本を読み、興味を持ったトピックを深く学ぶ(最長1か月以内で読み切れるもの)
- 歴史に関する本を読み、重要な出来事や人物を理解する(まんがの歴史でも問題なし)
- 文学作品を読んで感想をまとめる(感想文が難しければ感想を言う時間をつくる)
- 生物学の本や動物の観察記録を読む(昆虫に関する本は数冊読んでおきたい)
- 家族で同じ絵本を読み、感想を言い合う。(親子、もしくはきょうだいで2人以上で行う)
- 趣味や創作活動に関する本を読み、新たな技術やアイデアを学ぶ(習い事やすきなものについての本)
- 国語の勉強の一環として漢字の勉強や文章読解を行う(これは「日々」が大切)
- アートやデザインに関する本を読み、芸術的な感性を育てる(博物館のパンフレットでも可)
- 知的なゲームやパズルを通じて論理的思考力を鍛える(アプリでも問題ない)
このような読書プランを通じて、様々なジャンルの本をバランスよく読むことで、幅広い知識や読解力を身につけることができます。上記から該当するものも既にあると思いますので、プラスで月に2~3項目追加できるようになればよいでしょう。楽しんで、あるいは興味をもって読めることが重要です。
速読は重要ですが、速く読むだけでなく、論理的思考力を養うことも大切です。深い理解力や思考力を養うことで、情報をより効果的に利用し、正確な判断を下すことができます。さらに、文章の背後にある意図や著者の感情を読み取る能力も重要です。それは、問題作成者の問いについて、論理的に思考し、時間内に答えられるようにつながります。速読は有用なスキルですが、それだけでなく、文章を理解し、ある程度批判的に考える能力、もしくは自分の意見を持つことも、より豊かな知識と洞察力を養う上で重要です。※速読だけを追求すると、文章の内容や意味を十分に理解できない可能性があります。
前回の記事はコチラ↓
コメント