絵本から読み解く「猫の建築家」

絵本の紹介

前回は『ぶさいく』から愛をテーマにしました。今回は「猫の建築家」、主題は「美」について。主人公は猫。何度生まれ変わっても、建築家という職業を受け持ち、”美”と”形”について考察していく。淡々と話が進行していくが、哲学的な文章は心が洗われる。どちらかというと大人向きの絵本だろうし、子どもの時読んでみてよくわからない絵本だったなと思っても、何年か後に読み返すと英語で読んだりしてよりためになるかもしれません。

目次

あらすじ

『猫の建築家』は、森博嗣による静謐(せいひつ)な物語で、建築家として何度も生まれ変わる猫が「美」の意味を問い続けるという内容です。この作品は、新進画家・佐久間真人との共同制作であり、英文も併記されています。読者は、猫の目を通して建築と美についての哲学的な探求を体験することができます。私は日本文で一度読み、その後、日本文と英文見ながら読み直しました。

※「静謐な物語」とは、穏やかで平和な雰囲気を持つ物語を指します。この表現は、物語の中で静かで落ち着いたトーンが用いられ、読者に心の安らぎを与えるような作品を表現する際に使われます。『猫の建築家』の場合、猫の視点から見た世界の静かな美しさや、建築の細部に対する繊細な観察が、この「静謐」な雰囲気を生み出しています。物語全体を通じて、穏やかで思索的なムードが感じられるのです。蛇足ですが、夏目漱石の「吾輩は猫である」も猫の視点ですね。こちらも猫の視点で書かれた小説なので、冒頭で「吾輩は猫である。名前はまだない。」という表記は、当時はかなりセンセーショナルな話題になったと思います。

ネズミを探しましたか? 

巻末の挿絵一覧に『猫はネズミを見ています』というタイトルがあります。全く気が付きませんでした。真剣に探してネズミを見つけた時の喜びは幸せを感じます。見つけた時にちょっと嬉しくなりました。

中学入試の視点

問題: 『猫の建築家』に登場する猫は、何度も生まれ変わりながら建築家としての道を歩みます。この猫が建築家として生まれ変わることにはどのような意味があると考えられますか。説明しなさい。(自由記述)

解答例) 猫が建築家として生まれ変わることは、美の本質を追求する旅であると考えられる。なぜなら、建築家としての技術や知識を積み重ねることで、猫は美に対する理解を深め、それを自身の作品に反映させることができるからだ。また、生まれ変わりは、異なる時代や文化における美の多様性を学ぶ機会を与え、猫にとっての「美」の定義を広げることにもつながる。このプロセスは、読者にも美について考えるきっかけを提供てくれていると思う。

解説: この問題は、物語のテーマである「美の探求」という点に焦点を当てています。解答例では、猫が建築家としての経験を積むことで美に対する理解が深まるという点を強調し、生まれ変わりがもたらす多様な視点の重要性を説明しています。また、読者自身の美に対する考察を促す作品の意図も述べています。前半の2文に近い内容が書ければ十分です。この問題は、子どもが物語に深い理解を示しているかということと、自分の考えを論理的に展開することを心がけて作成しました。

前回の記事はコチラ↓

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